高知安芸の阪神秋季キャンプ。連日、阪神ファンでにぎわっているとのこと。その視線の先には新監督の藤川球児がいる。

11月11日付のスポーツ紙で大きく報じられていたのが、球児が打者井上にアドバイスを送ったことだった。あくまで投手目線での考えを伝えたとのこと。いよいよ監督として、未知の領域に踏み出したか、と興味深く記事を読んだ。

阪神に「投手出身監督」が誕生したのは2002年の星野仙一以来となる。というか阪神に投手出身の監督が生まれるのは極めてまれという歴史がある。さかのぼってここ50数年、監督として名を刻んだのはたった2人しかいない。星野ともうひとり、村山実(2度就任)である。

星野退陣のあと、岡田が継ぎ、そのあとが真弓、和田、金本、矢野と受け継がれ、そして岡田に戻ってきた。その間、投手出身のキャリアを持つ人は監督候補に挙がることはなかった。

正しいか間違っているかは別に、球界の定説として監督に向くのは内野手出身とされてきた。それに続くのが捕手出身で、反対に外野手、投手は不向きとの声を多く聞いてきた。そこには明確な根拠はない。なぜ? と監督経験者に問うと「投手はお山の大将的な気質が多い。投げて抑えることに終始して、攻守のチームプレーなど細かい戦術にまで入り込まない」とか「外野手は例えばピンチの場面で、マウンドにコーチ、内野手が集まる時、その輪の中に入れない。どういった話をされているのかがわからないのも弱点になる」という見解を聞いたことがある。

これらを不向きの理由とするには、あまりに薄い根拠だと思うが、実際に阪神の場合、投手出身監督が極めて少ないという歴史が存在してきたのだ。

2025年シーズン、セ・パ12球団の監督のうち、投手出身は半数の6人となる。セ・リーグでは球児にDeNAの三浦、ヤクルトの高津。パ・リーグではロッテの吉井、オリックスの岸田、西武の西口。これまでの球界の説からいえば、新たなフェーズに入ったかと思える現象になった。

そういう意味で、今回の球児の打者への指導に興味をそそられる。そもそも打者への技術的指導は難しい。それは球児自身もわかっている。ならば「投手目線」での助言がある。これが適切なら、バッターにも多くのプラスをもたらす可能性が生まれる。いかにも球児らしい寄り添い方…と感じた。

いまは選手個々の力を磨く時で、来年2月のキャンプからチームプレーに注力する。そこでオフェンスの細かな戦略が構築されていくわけで、投手出身監督の理解度、戦略眼が試されることになる。果たして球児新監督のプランは? そんなことを考えているところに届いた初の打者指導の報道。まずはアプローチに成功といったところである。【内匠宏幸】(敬称略)