「山口高志」という名前を聞いて「おお~」と思うのはオールド・ファンでしょうか。70年代に阪急ブレーブスで先発、クローザーとして君臨した豪腕。75年からの3連覇に貢献したレジェンドの1人です。

熱心な虎党にもおなじみのはず。闘将・星野仙一に誘われ、阪神に入団。コーチ、スカウトとして活動しました。2軍コーチ時代は現在の藤川球児投手(現・監督)が飛躍するキッカケとなる右ヒザの使い方について指導をしたことでも知られます。

昨年末に山口氏と食事をする機会がありました。そのとき、カバンからポンと出す感じで「これ、あげる」と言って1冊の新書をテーブルの上に出すのです。なんですか、それ? と言って見た本のタイトルは「山本由伸 常識を変える投球術」(中島大輔著 新潮新書)。

言うまでもない昨年、米大ドジャースの世界一に大貢献した山本投手について過去に書かれたもの。阪急、オリックスの後輩で、日本を代表する大リーグ戦士となった山本に興味があったということでしょうか。

「山本由伸とは話したことがないんや。どんな感じかなと思って。でも、やっぱり普通の投手とは違うから参考にはできないかな」…。そう言って現在の“お悩み”をポツリと口にしてくれました。

75歳の同氏は現在も母校・関西大のアドバイザリースタッフとして学生の指導に携わっています。子どもというより、ほとんど孫のような世代の学生たちを指導中ということでしょう。

「学生に教えるのは、なかなか難しいで。コミュニケーションの取り方も含めてな」。冗談ぽく苦笑しながら、いかにも“今風な悩み”を打ち明けてくれました。

若者を指導するのが難しい時代というのは、もはや、世間の常識でしょう。職場においても中間管理職はもちろん、20代の社員でも後半になれば大学を出たばかりの若手とはなかなか意思疎通できない…などという話も聞きます。

個人的には世代間、年齢だけでなく人間同士の相性のようなものも大きく関係するのではと思ってはいますが、正直、世間と同じようなことを感じないと言えばウソになります。

ここで率直に「すごいな」と思うのは山口氏の姿勢です。何といってもレジェンド。「こう練習しろ!」と言えばそれですむような気もするのですが、この時代、やはり、そうはいかないということでしょうか。だからこそ山口氏ほどの人物をして何かヒントを求め、探っているということなのかと思えば、やはり、その姿勢を尊敬するのです。

こちらも同じだと思います。監督、コーチ、選手、球団関係者、後輩記者たちと年齢を重ねても取材を続ける限りは、話をする相手はいつも若いという現実がある。なるべく柔軟な頭で、かつ守るべきと信じるものは守って、今年もやっていきたいと思う新年です。

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新たな1年が始まりました。「おめでとう」が当たり前の正月ですが、人生は喜怒哀楽が満載。マイナスな気分で新年を迎えた方も少なくないと思います。それでもしっかり生きていかなければならないのは、みな同じ。命があることに感謝し、かつ覚悟を決めて臨みたい年頭ではないでしょうか。

今年もタイガースに密着する「虎になれ!」、そして随時お届けの「高原のねごと」などのコラムをお届けする所存。何とぞ、よろしくお願いいたします。【編集委員・高原寿夫】

◆高原寿夫(たかはら・ひさお) 取材生活30年を超え、還暦も超えた“おっさん記者”。88年の入社以来、吉本興業から宝塚歌劇団、社会面担当から始まって取材記者ひと筋。野球記者としては「イチロー・オリックス日本一」「星野阪神V」「緒方カープ3連覇」などの瞬間に現場で立ち会った。大阪出身、関西大卒。日刊スポーツ大阪本社編集委員。