記者の後悔の先にあった〝ゆなすみ〟の覚悟と絆~五輪ペア2枠目獲得の瞬間を見て~
北京で開かれたフィギュアスケートのミラノ・コルティナ冬季五輪最終予選ペアで、長岡柚奈(ゆな、20)森口澄士(すみただ、23)組(木下アカデミー)が日本の2枠目を勝ち取りました。
今大会で争われた3枠の最後の椅子に滑り込む3位。3月の世界選手権優勝で1枠を確保した三浦璃来、木原龍一組(木下グループ)に続いた結果、五輪ペアで日本勢史上初となる複数組派遣が実現します。
現地で取材した記者が見守った一部始終、快挙達成により抱いた感情を「Ice Story」としてお届けします。
フィギュア
◇ ◇ ◇
この原稿は北京首都国際空港をたち、日本へと戻る機内で書いている。
9月22日午前。
窓側の座席から北京の立ち並ぶビルを眺め、パソコンを開ける状況になるまで、少しだけ目を閉じた。
前日21日まで行われた五輪最終予選のシーンを思い浮かべると、最も印象深い場面が初めに出てくる。
あらためて、自分は未熟だと思った。
インターネット環境のない雲の上。
あの時の振る舞いを反省しながら、黙々と、この原稿を書き進めたい。
9月20日
9月20日、午後4時半前の出来事だった。
五輪出場枠「3」を懸けたペアフリー。
日本から出場した長岡、森口組はショートプログラム(SP)を4位で終えており、出場枠を勝ち取るために、少なくとも1つは順位を上げる必要があった。
だが、迎えた本番。
序盤に2人そろって跳ぶサイド・バイ・サイド・ジャンプの2つ目がシングルアクセル(1回転半)になった。
ループ、サルコーと2つのスロージャンプも、本来の伸びやかな着氷ではない。
得点を聞いたキス・アンド・クライでは、コーチが先に席を立ち、しばらく2人で手を握り合っていた。
その様子を写真に納めた後、私は小走りで取材エリアへ向かった。
まずテレビの取材が始まった。文字媒体の記者からは大きな壁で仕切られ、様子を見ることができない。
その間にアルメニアのペアが演技を終え、長岡、森口組の上位につけた。
残り2組で暫定2位。
双方に上回られた時は、枠を逃してしまう状況だった。
フランスペアの演技が始まった。
序盤に組み込んだサイド・バイ・サイドの3回転サルコーが、2回転となった。続けて挑んだ3回転トーループも転倒。
その頃にテレビ取材を終えた長岡と森口が、我々の前にやってきた。
◇ ◇ ◇
日本スケート連盟の関係者とは、事前に取材対応の流れを打ち合わせていた。
多くの競技会では取材がそのまま行われる。例えば日本勢が最終組に固まっていた場合、その都度取材を進めなければ、以降は表彰式、メダリスト会見、ドーピング…と続くからだ。
その場合は記者も、選手も、滑っている選手の演技を時折モニターを見ながら、取材が進んでいく。
だが、今回は事前に「状況次第で」となっていた。
出場は日本勢1組。締め切り時間に迫られていない夕方だったことも幸いした。
長岡と森口がこちらに現れ、今回は、その時滑っている選手の演技を見守った後の取材と空気で察した。
数十秒間、誰も、一言も発さずに、演技を見ていた。
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松本航Wataru Matsumoto
大学までラグビー部に所属。2013年10月に日刊スポーツ大阪本社へ入社。
プロ野球の阪神を2シーズン担当し、2015年11月から西日本の五輪競技やラグビーを担当。
2018年平昌冬季五輪(フィギュアスケートとショートトラック)、19年ラグビーW杯日本大会、21年東京五輪(マラソンなど札幌開催競技)を取材。
21年11月に東京本社へ異動し、フィギュアスケート、ラグビー、卓球、水泳などを担当。22年北京冬季五輪(フィギュアスケートやショートトラック)、23年ラグビーW杯フランス大会を取材。
身長は185センチ、体重は大学時代に届かなかった〝100キロの壁〟を突破。体形は激変したが、体脂肪率は計らないスタンス。
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