「加齢性難聴」に限らず「難聴」は社会生活に大きな影響を及ぼすことは前回紹介しました。その中で「認知症」「うつ病」との関係にも触れました。今回は加齢性難聴と認知症の関係にスポットをあてます。
2020年7月、権威ある医学雑誌「ランセット」に認知症の12の危険因子を取りあげた論文が掲載され、社会に大きなインパクトを与えました。しっかり対応すると認知症予防につながるからです。その12因子とは、「難聴」「教育不足」「喫煙」「うつ病」「社会的接触の少なさ」「外傷性脳損傷」「高血圧」「大気汚染」「運動不足」「過度のアルコール消費」「肥満」「糖尿病」。
この中で、中年期の難聴が最も大きな影響を及ぼしている、という報告です。予防可能な因子の中で難聴が最大の7%を占めています。加えて、難聴が悪化することで認知症発症リスクが確実に上がる、ということも言われています。認知症のリスクとして難聴は見逃してはならないので、早く対策を取りましょう。
その他、「難聴があると脳の記憶に関連する海馬などの容積が減少する」という報告もあり、それによっても認知症が進行するのです。認知症への影響はいろいろあるので、「軽中等度の難聴の方でも放置すると認知機能の年齢が7歳上がる」と。また、「難聴者の認知能力は正常聴力者と比べて約30%低くなる、低下が早くなる」とも言われています。難聴は進行すればするほど認知症に近づきます。
そこで重要な対策は、「補聴器を使う」ことです。補聴器を使うと認知機能の低下が抑えられることも報告されています。だから、「難聴が軽度であっても補聴器をつけましょう」ということになります。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)

