「加齢性難聴」の「補聴器療法」では、「難聴を改善させたい意志がある」ことが重要です。なぜなら、補聴器をつけてもすぐにやめてしまう患者さんが少なくないからです。それにはどのようなケースがあるか、3つのケースを紹介します。
第1は、「補聴器をタンスの中にしまってしまう」ケース。最初、患者さんに補聴器を渡してつけてもらうと、「あー、ザワザワしてうるさい! 小さい音にしてください!」と。専門医は「そこは慣れてください」とお願いするのですが、聞く耳を持たず、音量を下げざるを得ないことがあります。音量が下がると不愉快ではなくなりますが、言葉も小さくなるので聞こえない補聴器にーー。それでは補聴器をつけていない状態と同じです。役立たない補聴器なので、タンスの中にしまわれてしまうのです。60、70代で初めて補聴器を使われる方に多くみられます。
第2は、「見た目だけを気にして補聴器を選んでしまう」ケース。補聴器にはいろんなタイプがあります。耳の穴に収まってまったく見えないタイプなどさまざまですが、難聴が重いのに見た目だけを気にして「小さいのが欲しい!」と買ってしまう。すると患者さん自身に必要な音量が得られずに、また聞こえない補聴器ができてしまうのです。
第3は、「耳にフィットしていない補聴器を持っている」ケース。補聴器は外側にマイクがあって、入ってきた音を増幅して耳に大きくした音を入れる装置です。その大きくした音が何かの拍子に外に漏れると、その音がマイクに入ってハウリングを起こすパターンがあるのです。このような耳にフィットしていない補聴器を持っている方は、使用しなくなるパターンが多くみられます。
私どもの補聴器外来を受診される患者さんの中には、「今まで補聴器を作っても専門医に診てもらっていませんでした」と受診される患者さんはいます。そういう患者さんの30%はうまく調整できていません。そうならないように、私たちは対応しています。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)

