最近、阿部英斗の走りが印象に残る。輝かしい競技歴を引っ提げ、この世界に入ってきたエリート。しかし、現実は甘くなかった。自転車さばきが柔軟な分、苦しくなるとヨコの動きに頼るレースが続いたからだ。ヨコができることは武器になる。ただし、頼りすぎると踏める距離が短くなり自力の幅が狭まる。それを補うにはレースを読む力が必要になるが、まだ125期21歳の阿部には早かった。周囲のアドバイスもあり、自力に徹しようとするが、染みついたヨコの動きは簡単には消えない。

昨年平塚G3の2予。7番手から巻き返したものの自転車の出が悪く、中団付近で内に切り込んだ。4角番手の選手は無警戒だったこともあり、接触(失格押上、落車棄権)、という結果に終わった。この一戦が、戦法への向き合い方を変えたように見える。

誰しも得手不得手があって、阿部はタテ足に加えて、ヨコのセンスもある。ただ、それまでのレースは「どう勝つか」より、「どうやって勝つか」が先に立ち、次につながる勝ち方という視点が抜けていた。

あのレース以降は力で勝負することが増えた。前場所の大垣G3も、1予で負けはしたが4日間を通して内容はよかった。競輪は結果だけではなく、その過程が次につながる競技だ。阿部のレースは変わり始めている。あとは、それを結果に結びつけられることが重要だ。1予2Rは4分戦だがレース幅の広さは阿部が勝るとみた。(日刊スポーツ評論家)