柔道男子60キロ級で2021年東京五輪(オリンピック)金メダルの高藤直寿(32=パーク24)が9日、都内で会見を開き、現役引退を発表した。

紺色のストライプ柄のスーツに赤いネクタイを絞め、入り口前で一礼して登場すると、こう切り出した。 「私、高藤直寿は柔道選手として一区切りをつけたことをご報告したいと思います。今までたくさんの方々に支えてもらい、ここまで自分はやりきることができました」。

約25年間の選手生活に終止符を打つことを決めた。

第一線を退くことを考えたきっかけは、昨年11月の講道館杯全日本体重別選手権。

3回戦敗退に終わったことから「負けた時にロサンゼルスオリンピックは厳しいだろうと思った。諦めたくない気持ちもあったが、後輩とかが勝った時にうれしかったのがあって、選手として戦うべきではない。もう負けたくない。勝てない自分に価値はない」と考えるようになった。

埼玉県生まれの高藤は、7歳から柔道を始めた。東海大相模中では全国中学校体育大会で優勝。東海大相模高1年時に世界カデ選手権、高3時には世界ジュニア制覇。東海大進学後も数々の国際大会で好成績を挙げ、異彩を放ってきた。

16年にパーク24加入後、リオデジャネイロ五輪では銅メダルを獲得。コロナ禍の延期を経て雪辱を期した21年東京五輪では日本勢金メダル1号となり、悲願の王者の称号を手にした。

2連覇を目指した24年パリ五輪の代表を逃した後は一時は引退も考えたが、現役続行。左膝の靱帯(じんたい)断裂の大けがを負ったが、粘り強く復活の道を歩んだ。

昨年にも28年ロサンゼルス五輪を目指す意向を示した。同4月の全日本選抜体重別選手権ではしのぎを削ってきたパリ五輪銅メダルの永山竜樹(28=パーク24)の試合でコーチ席にも座ったが、8月の全日本実業個人選手権では3位と結果を残していた。

今後は所属先の男子コーチと女子のアドバイザーに就任する。柔道を始めてから四半世紀。志半ばで一線を退くことを決めた柔道家は「僕にとって柔道は自分の道だった。常に柔道が道をつくってくれて、その上を歩いてきて、自分の人生という畳の上では大事な出来事が起きてきた。この柔道の道をこれからもどんどん歩んでいけたらなと思います」と締めくくった。

◆高藤直寿(たかとう・なおひさ)1993年(平5)5月30日、埼玉県生まれ。栃木県で育ち、神奈川・東海大相模中・高-東海大-パーク24。11年世界ジュニア選手権制覇。13、17、18、22年世界選手権優勝。16年リオデジャネイロ五輪銅、21年東京金メダル。左組み。得意技は肩車。趣味はゲーム。座右の銘は「信念」。家族は妻、長男、長女、次女の5人家族。160センチ。