女優高島礼子(61)が、初の新派公演に参加する。「新派・松竹新喜劇 合同喜劇公演」(5月9~19日、東京・新橋演舞場)で名作喜劇「明日の幸福」に出演する。経験を重ねても、挑戦、ニュートラルにという言葉が自然に出る。女優デビュー作に触れながら、大事にしてきた先輩俳優の言葉も語った。【小林千穂】
★まず稽古着作りたい
舞台経験も豊富で、着物が似合うイメージもあるので、新派が初とは意外だった。新派は創始138年を迎える劇団で、明治から続く、市井の人々の悲喜こもごもを描いてきた。
「歴史がある新派に参加できるなんて思ってもみなかったので、光栄です。断る理由なんてなかったです。ぜひお願いしますと二つ返事でした」
出演する「明日の幸福」は、再演が重ねられてきた名作喜劇。3世代同居のホームドラマで、親子、夫婦、嫁姑と、それぞれの立場で苦労する家族が、きずなを取り戻す姿をコメディータッチで描く。高島は上にも下にもはさまれた中間世代の妻を演じる。
「上と下の両方に対応しつつ、右往左往しているおもしろさも表現できたらいいです。水谷八重子さんをはじめ多くの方が演じられていますが、まねはできないので、皆さんのいいエキスだけをいただいて、頑張りたいです」
今回の演出を手がける石井ふく子さんの舞台「かたき同志」に昨年出演したことがきっかけになった。
「ちょうど出演していた時にお話をいただいたんです。心の中でびっくりでした。公演中に先生が許可くださらなかったらどうしようって、ドキドキでした」
新しい世界だが、ことさらプレッシャーに感じることもない様子だ。
「気負わず、素直な気持ちでいた方がいいかなと思っているんです。作りすぎて準備してしまうと、後でこうしてほしいと言われた時に大変になると思うんです。まだまだ改善の余地がある、というところのニュートラルさを大事にしたいです」
稽古に向けて、稽古着を準備したいという。
「『かたき同志』の時、藤山直美さんがきちんと着物、浴衣の稽古着で帯を締めていたのを見て、私もやるからには稽古着作りたいです。楽しみです。まずは格好から入るタイプなので(笑い)」
★「暴れん坊将軍」契機
女優デビューは1988年、松平健主演のテレビ朝日系「暴れん坊将軍」だった。
「40年近くたっても自分のデビュー作がこんなに人気作品で、そこでデビューした私は幸運極まりないです。そして、健さんが今でもこんなに人気があるということも本当にうれしいと思ってます」
★松平健の具体的言葉
互いの舞台を観劇したりと交流が続いている。
「私が舞台をやると、ご自分でチケットを買って来てくださるんです。お礼言わなきゃ! と思って追っても、スッと帰っちゃうんですよ。事前に連絡いただいて来られることもありますね。感想ですか? 健さんは寡黙なので『頑張ってるね』とか、そんな感じです。寡黙な分、一言がしみますが、沈黙が続いて(さっきの話が)やっと理解できることもあって、なかなか楽しいですよ」
「暴れん坊将軍」時代、松平に言われた言葉を振り返った。
「健さんの言葉って具体的だったんです。指輪が似合う手でいなさいとか、女優だったらグリーン車に乗りなさいとか。今思うと、人前に出る人間としての意識を持ちなさいってことだったんだと思うんです」
★浅茅陽子助言も実感
共演した浅茅陽子の言葉も実感する日々だ。
「『本当に芝居が楽しく思えるのは50歳過ぎてから』と言われたんですが、当時20代の私には全く意味分からなかったんです。でも、浅茅さんの言葉はずっと心に残っていて、40代、50代になった時、本当にお芝居が楽しいと思えるようになりました」
★「できない」一切なし
新しい世界への挑戦を、心から楽しそうに、目を輝かせて語る。
「私、これはできないっていうのが一切ないんです、本当に。新派の舞台も、素直に石井先生のアドバイスを聞き、脚本にのっとり、その時の感性で演じていきたいと思います」
挑戦する気持ちは常に持ち続けている。15年前には、ソウルで1カ月間かけて撮影した韓国ドラマに出演した。脚本もない状態でのオファーだったが、この時も二つ返事で受けた。
「本当に大変だったんですけど、さらりと受けちゃったんです。夏休みを返上してソウルに行きました。聞いていたことと全然違うことばかりだったんですが、気合でやりました。挑戦という気持ちがないと楽しめないですよね」
★子供の頃は内向的
子供のころは内向的だったそうだが、10代後半からカーレースに、その後もモデル、女優と挑戦し続けてきた。
「挑戦することに全然怖がらないタイプだったかもしれないですね。もちろん失敗もありますけど、失敗があるから、小さな幸福があると思ってます」
数年前にインスタグラムを始めたのも挑戦の1つ。生活の彩りとなった。
「興味がなかったことにもどんどん挑戦するようになりました。食事の写真を撮るとか、自撮りもしたことなかったですけど、今は楽しいです。生きがいですね」
インスタがきっかけで、できるようになったことも教えてくれた。
「(外で)1人ご飯を食べられるようになりました。それまではまったくできなかったんです。吉牛(=吉野家の牛丼)が大好きなんですけど、いつもテイクアウトでした。今ではもちろん店内でも食べます。焼き肉もラーメンも大丈夫です。まだ挑戦できてないのが1人回転ずしなんです」
実現したらインスタにアップしてください、と言うと「はい!」と笑った。
▼「明日の幸福」演出を手がける石井ふく子さん
2012年1月、明治座の舞台「女たちの忠臣蔵」での出会いから始まり、あれから14年がたちました。映像や、幾度もの舞台を経て、女優として美しく進化し続ける高島礼子さんと歩めた時間は、私にとってもかけがえのない宝物です。このたび、再び舞台でご一緒できることが、今から楽しみでなりません。これまでともに積み上げた確かな信頼を胸に、ゆっくりと心を通わせていけたら幸せです。最高の幕開けを願って…。
◆高島礼子(たかしま・れいこ)
1964年(昭39)7月25日、神奈川県生まれ。88年、テレビ朝日系「暴れん坊将軍3」で女優デビュー。01年、映画「長崎ぶらぶら節」で日本アカデミー賞優秀助演女優賞。舞台は「御宿かわせみ」「春日局」「メイジ・ザ・キャッツアイ」など。映画「極道の妻たち」シリーズでは4代目極妻として主演。ほか「陽炎」シリーズなど。ドラマはNHK「天地人」「精霊の守り人」など。趣味はテニス、ゴルフ。スイーツめぐりも大好き。








