主演女優賞は「遠い山なみの光」(石川慶監督)「ゆきてかへらぬ」(根岸吉太郎監督)「片思い世界」(土井裕泰監督)の広瀬すず(27)が受賞した。11月22日に東京・築地の日刊スポーツ本社で開催した、選考会での議論を公開する。(選考委員は敬称略)
<主演女優賞ノミネート>
広瀬すず(「遠い山なみの光」「ゆきてかへらぬ」「片思い世界」)
シム・ウンギョン(31=「旅と日々」)
倍賞千恵子(84=「TOKYOタクシー」)
松たか子(48=「ファーストキス 1ST KISS」)
吉永小百合(80=「てっぺんの向こうにあなたがいる」)
品田英雄(日経BP総研客員研究員) 「TOKYOタクシー」は、おばあさまたちが東京・新宿ピカデリーにで「倍賞千恵子さん、いいお声よねと」言っていて、会場が幸せな空気になった。映画が途中から良い感じになったのは、倍賞さんのお力。
神田紅(講談師) 倍賞さんは良かったですね。広瀬すずさんも素晴らしかった…悩みます。
寺脇研(映画評論家) 「ゆきてかへらぬ」は、100年前の話を今やることの中で、100年前の人間が、どう見えるか? ということ。広瀬さんが演じたのは、100年前の売れない女優というポジションで歴史に残る文豪(木戸大聖が演じた中原中也と岡田将生が演じた小林秀雄)を翻弄(ほんろう)する。10年前に新人賞を受賞した子が、こうやるんだと。「遠い山なみの光」も、悪くない。
神田 時代の感じが、すごくよく出ていた。
寺脇 技術、カメラがコントラストを良く描いていた。受賞作、受賞対象作の、どこにも「ゆきてかへらぬ」がないのは寂しい。
伊藤さとり(映画パーソナリティー) 大正時代と昭和…広瀬さんは、レトロが似合う。「旅と日々」は、俳優の演技の引き出し方が素晴らしい。シム・ウンギョンさんが良かった。せりふがない中、せりふに頼らずに情景を、人への興味でカメラを動かしている。その中、動きでどう表現するか。すごく面白い演技を見せる、希有(けう)な存在。すごく美人顔とまではいかないけれど、魅力的。日本では、なかなかそこを見ない。動いている人って、せりふではなく、すごく面白いということを、シムさんの演技で再確認できました。
笠井信輔(フリーアナウンサー) 広瀬さんは、20代にして「遠い山なみの光」「ゆきてかへらぬ」2作のお芝居は素晴らしい。「遠い山なみの光」では、子どもたちに感情の発露をするあたりからこの人、本当は何者なんだろうという気持ちの変化を与える。「ゆきてかへらぬ」では、落ち込んでいた中原中也を支えるに、あまりある存在感だなと。一方で、私は「片思い世界」が好き。(杉咲花、清原果耶との)3人が屈託なく演じているから悲劇性が立つ。広瀬さんの演技は重要。3本目として、対象作には入れた方が良い。
福島瑞穂(参院議員)広シム・ウンギョンさんは「怪しい彼女」「新聞記者」でも、ものすごく演技がうまい。吉永さんの「てっぺんの向こうにあなたがいる」は、家族のことも描いていて面白い映画だと思った。広瀬さんは今年、いろいろな役をやって、すごい頑張っていた。その頑張りは評価すべき。推します。
石飛徳樹(映画評論家) 僕は吉永小百合さんがいいと思いました。「てっぺんの向こうにあなたがいる」は、福島さんがおっしゃったような理由で、最近の吉永さんの映画では一番。周りから浮いちゃうところだったり、子供との関係がギクシャクしちゃうところとか、あそこまでやるんだなと。女優は今年、目立つ人はいない中、僕は吉永さんを推したい。
橋本亮(共同通信記者) 倍賞さんは(22年に主演女優賞を受賞した)「PLAN75」と同じように、死に向かう高齢女性を全く違うところで見事に演じ分け、高齢社会で生きる女性を演じてくださった。推しだったんですけど…そう思いつつも広瀬さんも、いろいろなものを見せてくれた、というのはありますね。
<投票1回目>
◎広瀬すず 11
シム・ウンギョン 2
松たか子 1
吉永小百合 1
※過半数の8票を得た作品、俳優が受賞



