衆院選で自民党が歴史的圧勝をおさめて得た「数の力」が、18日に始まった特別国会であらためて可視化される形で見えてきた。これまで召集日に行われてきた同党の両院議員総会は、国会内の控室では入りきれないということで、敷地内の衆院別館にある講堂で行われた。ここ数年は、一昨年の衆院選で議席を増やした立憲民主党が両院議員総会を開く際に使い、衆院選直前に結党された中道改革連合の党大会も行われた場所だが、今回の自民党の「人密度」の高さは比べようもなく、報道陣もなかなか中に入れないくらいの密集ぶりだった。
その後、控室に戻って衆院議員だけの代議士会が行われたが、こちらでも議員が入り切れず、いすに座れなかった重鎮議員も、立ったまま議事を聴いていた。対照的に、議席数が公示前から3割以下となった中道は、これまでと同じ控室で代議士会が開かれたが、衆院選前と対照的な「こぢんまり」感となっていた。
今回の衆院選で感じたのは、「メッセージ性」の大切さだ。選挙でメッセージ性が大切なのは当たり前なのだが、今回、各党の明暗を分けた1つに、政党のポスターの存在があったように感じる。1月10日に読売新聞で衆院解散の可能性が報じられてから2週間あまりの間で、撮影を含めて1から製作となったのは新党の中道くらいではないかと思うが、ここで有権者に刺さるかどうかの分かれ目があったようにも感じる。
衆院解散総選挙が本当に1月に行われるとは、まだだれも信じていなかったころの昨年12月16日、自民党は「日本列島を、強く豊かに。」というコピーを付けた高市早苗総裁(首相)の、初の政治活動用ポスターを発表した。2枚のうちの1枚は、高市首相が、見る側に握手を求めるように手を向けた構図で、これまでに多く目にしてきた自民党総裁のポスターとは明らかに雰囲気が違っていた。
この時、鈴木貴子広報本部長は、高市首相がこだわったのは「表情」だったと明かし、「いついかなるときも笑顔を見せたい。国民のみなさんが感じている不安を希望に変えたいと、いつもおっしゃっているが、表情でも一挙手一投足で示したいというお気持ちが強かった」と述べていた。共産党の田村智子委員長や社民党の福島瑞穂党首はいるが、女性初の総理総裁という新鮮さは、それだけで他党のトップに比べてアドバンテージがあった。強みの1つである笑顔で真正面を向き、握手を求めるような図柄は、第一印象として、新鮮だった。
衆院選を取材中にたまに目にしたのは、この「握手ポーズ」の高市首相の写真と候補者による「2連」ポスター。中には、候補者とほぼ同じ大きさで高市首相の握手ポーズの写真が使われているものもあった。候補者の横であの笑顔で、高市首相が握手を求めるような構図。惨敗した中道の候補者が選挙後、「だれと戦っているのか分からなかった」「すべての候補者が、高市さんのお面をかぶって選挙をしているようだった」などと話す意味も実感できる。
一方、その中道は、急ごしらえの新党の共同代表に就いた野田佳彦氏と斉藤鉄夫氏が、笑顔で斜め上を見上げたポスターだった。1月20日の発表会見で、渡辺創広報委員長(当時)は、「視界の先には、未来や将来がある」という思いを託したと述べていた。こうした「斜めを見上げるスタイル」は、選挙ポスターの定番の1つ。コンセプトは理解できるが、高市首相の真正面からの笑顔に込められたメッセージ性には、やはりかなわなかったのではないかと感じる。
日本維新の会や日本保守党など、党首が真正面を向いたポスターは多かったが、自民党がポスターを作成するに当たって吟味した色合いの柔らかさなども、結果的に他党との違いを生んだようにも思う。
2005年の郵政選挙で圧勝した自民党の小泉純一郎氏は、その4年前の参院選で使用された際に売り切れが続出したポスターと同じ、斜め上を向いた表情のどアップだったし、2009年衆院選で自民党から政権を奪った民主党代表の鳩山由紀夫氏のポスターは、「政権交代」の文字より、真正面を見すえた鳩山氏の顔が大写しになったものだった。一方、2012年衆院選で政権を失った野田佳彦首相(民主党代表)のポスターは、真っ赤な色を背景に「動かすのは、決断。」のコピーで真正面を向き、力強い印象だったが、野田民主党は惨敗し政権を失った。
党首が登場する政党のポスターに「正面を向いているからメッセージが伝わる」「斜めを向いたら伝わらない」などの法則はたぶん、ないと思う。ただ今回の衆院選では結果的に、もしかしたら製作の段階で勝負がついていたのではないかと思わされるほど、高市首相のポスターのイメージが与えたインパクトは大きかったように感じる。【中山知子】


