北方謙三の大河小説を実写化した連続ドラマ「水滸伝」(WOWOW日曜午後10時)がスタートした。「リーダーとは」「あるべき国の姿とは」という普遍的な問いかけは、今まさにホットなテーマでもある。作品にちりばめられた「今の時代を切り開くヒント」について、大原康明プロデューサー(36)に聞いた。
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-苦しむ民を救うため「梁山泊(りょうざんぱく)」に集まったはぐれ者たちの戦いの物語。ドラマは、中国の古典を大胆に再構築した北方謙三さんの大河小説「水滸伝」の世界を壮大なスケールで描いています。令和の時代に「水滸伝」を制作した意図を教えて下さい。
大原 私が北方先生の「水滸伝」を読んだのは高校生のころですが、当時より世界の閉塞(へいそく)感を感じていて。思いを発信したり行動したりという「アツさ」は冷笑されがちになりましたが、理不尽なものを突破したいというエネルギーは時代を超えても変わらないと思うんですよね。どう生きるか迷った時、必ず北方先生の「水滸伝」に立ち返って元気をもらってきたので、今こそ「アツさ」を世の中に届けられないかと思いました。
-主人公は、織田裕二さん演じる宋江です。天に替わって正義を行う「替天行道」を掲げ、能力も人生背景も異なるアウトローたちをまとめていくリーダーですが、とんでもないヒーローだらけの物語の中で、特に武術の達人でも知の達人でもないという存在。この人がリーダーであり、英雄たちが命をかけてついていく魅力は何だと思いますか。
大原 戦いの先頭に立つ武闘派リーダー、晁蓋(反町隆史)がいる中、宋江のリーダー性は、思想を届ける存在であること。会社でいえば、収益目標ではなく「何のためにこの仕事をしているのか」という経営理念の部分。「どこに行けばいいのか」といういちばん不安な部分を引っ張り、ビジョンに共感した個々が安心して能力を発揮できる。北方先生は「志」と言っていますが、まさに今の時代のリーダーにも求められているものだと思います。
-先ごろ衆院選があったばかり。「リーダーとは」「国のあり方とは」みたいなテーマに多くの人が向き合ったタイミングでもあります。
大原 「国とは何だ」みたいな話は、今の人たちの関心事とリンクしているなと感じます。政党や候補者に関係なく、この国を良くしたいという気持ちはみんな同じですよね。さらに言えば、「悪いやつを倒すぞ」と単純明快にはいかないところが世の中の面白さ。北方先生がオリジナルで追加した「青蓮寺」という組織のように、国を内部から立て直そうとする組織もあったりして、異なる正義のぶつかり合いも大きな見どころです。
-超豪華キャスト陣も話題です。織田裕二さんと反町隆史さんのツーショットはわくわくしますね。
大原 この2人が同じ画面に! という(笑い)。我々の世代は多感な時期に「踊る大捜査線」や「GTO」を見ているんですよ。こういう大人かっこいいな、とあこがれたのに、いざ自分がその年齢になってみると、なんか元気ないぞと。当時僕らを引っ張ってくれた織田さんと反町さんが水滸伝の世界に降臨してくれたら、今の世の中を切り開いていく背中や、ヒントを見せてくれるのではないかと思い、出演をお願いしました。
-撮影現場で見た2人の様子はいかがでしたか。
大原 2人が並んで釣りをするシーンがあるのですが、素晴らしいんですよ。もともと交流がおありだそうですが、まさに宋江、晁蓋が並んでいる雰囲気。この2人がいてくださるからチームも気持ちが入って、いい緊張感の中で撮影ができました。
-やりの達人である人気キャラ、林冲は亀梨和也さんです。
大原 企画が進んでいた時に別のドラマでご一緒して、「林冲がいた」と思いました。水滸伝の中でもすごい人気キャラで、一番期待を裏切ってはいけない役。北方版の林冲は、ただかっこいいだけじゃなく、奥さんを失った影を落としながらも、自分の弱さを見せないように戦場でハードボイルドに生きている男です。強さと弱さ、現場でのカリスマ感などすべてを表現できる人が必要で、亀梨さんにお願いしました。
-女性キャラたちも、心揺さぶる生きざまが満載ですよね。
大原 松雪泰子さん、波瑠さん、泉里香さんらが演じる女性キャラの強さは、女性の皆さんにぜひ見ていただきたいところ。もちろん、イケメン、イケオジが大勢いることもアピールしたいですが(笑い)、女性たちが正義をぶつける瞬間や、信念をもって自分の生き方を見つけていく姿は、現代の女性の皆さんにも大いに共感していただけると思います。
-織田裕二さんが「これほどのスケールのものは人生初」と語るほどの大スケールでスペクタクルが展開するのも話題です。
大原 撮影は8カ月、ロケは17都府県に及びました。制作費は公表していませんが、映画が何本もとれるような制作費でやっております(笑い)。
-WOWOWでは、大型企画の「ゴールデンカムイ」がクオリティー、話題性ともに成功を収めたばかりです。
大原 Netflixさん、Amazonプライムさんなど配信サービスがたくさんある中で、WOWOWも世の中の話題になる大型コンテンツを作って存在感を高めていこうという機運が高まっていた時期でもありました。構想からいうと5、6年。やっとお客さまに見ていただけることに感無量です。多くの方に見ていただけるよう、「ゴールデンカムイ」の成功に続きたいですね。
-さっそく、台湾、韓国での配信も発表されました。海外の人にも届く大きなコンテンツになるといいですね。
大原 そうですね。国があって、民がいて、苦しみながらも希望を見つけて生き抜いていくというテーマは、世界中の人に届くメッセージだと思うので。アジアから火が付いて、北米やヨーロッパにも広がっていくとうれしいです。
◆連続ドラマ「北方謙三 水滸伝」 若松節朗監督。2月15日スタート、WOWOW日曜午後10時放送中。全7話。配信はWOWOWオンンデマンド、Leminoで。
◆あらすじ
腐敗した世に、正義を信じる下級役人、宋江が立ち上がった。彼が記した世直しの書「替天行道」は、時代に抗う者たちの心を震わせていく。裏社会に生きる者、軍を追われた者など、すべてを捨てた者たち108人が旗のもとに集結。国家という巨大な敵に命がけで挑んでいく。
◆「水滸伝」とは
「三国志演義」「西遊記」と並ぶ中国三大奇書のひとつ。日本でも江戸時代から広く親しまれ、現代でも漫画やゲームの題材として人気。原作に新たな命を吹き込んだ北方謙三版「水滸伝」は、シリーズ累計1160万部を超える。
(C)北方謙三/集英社(C)2026WOWOW/NTTドコモ
【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)










